困ったとき、わからないことがあるとき、誰かに相談をしたいけれど相談ができる相手が見つからないとき…そんな時、AIに相談をするという人が増えています。24時間いつでも話を聞いてくれて、否定せず、即座に整理された回答をくれるAIは、どんなときでも味方になってくれる頼もしいツールといえるでしょう。時間や費用の負担を気にせず、いつでもアクセスできるその手軽さは、現代のテクノロジーがもたらした大きな恩恵です。

しかし、いくらAIに相談しても、どこか「核心に触れられない」「根本的な問題が解決しない」という行き詰まりを感じてはいないでしょうか。

AIの限界と「すぐに答えが出る」ことの落とし穴

AIは膨大なデータから「最も確率の高い正解(らしいこと)」を即座に導き出します。私たちは日々の忙しさの中で、時間や費用のコストを最小限に抑え、苦痛を「すぐに解消したい」と考えがちです。しかし、人間のこころは複雑で、私たちの抱えている悩みは簡単に「すぐに解決できるもの」ではありません。AIは便利な反面、「即時性」が落とし穴になることがあります。

例えるなら、「早く目的地に着くためにナビに従って高速道路の最短ルートを走る」ようなものです。AIは最短ルート(一般的な正論やアドバイス)を教えてくれますが、私たちが本当に迷い込んでいるのは、地図には載っていない鬱蒼としたこころの森の中です。

すぐに答えが出る環境に慣れてしまうと、私たちのこころは「思い通りにならない状況」や「曖昧な状態」に耐える力、つまり“こころのキャパシティ”を狭めてしまいます。答えを急ぐあまりこころの体力が落ち、現実の複雑な人間関係に直面したとき、少しの衝撃ですぐにつぶれてしまうという現象が起きやすくなるのです。

対面でのセラピーという「不便」で「生々しい」体験

精神分析的精神療法では、人間のこころを単なるデータの処理装置ではなく、言葉にならないような、本人でさえ気づいていない葛藤や気持ちが存在すると考えます。そうしたこころの動きが、身体の症状として現れたり、生きづらさにつながるのです。

対面のセラピーは「コスト(時間・費用・移動)」がかかります。AIとは異なり、それだけの負担がかかってきます。そして何より、目の前の生身の人間と対峙するという感情的なインパクトや葛藤が伴います。時には、セラピストに対して怒りや不信感を抱いたり、見たくない自分自身に直面して苦痛を感じたりすることもあります。

しかし、この「生々しいやりとり」こそが、私たちのこころの中の葛藤や感情を気づかせてくれるヒント(手がかり)となるのです。人は、過去の人間関係(親や重要な他者との関係)で傷ついたパターンを、現在の人間関係、そして目の前のセラピストとの関係の中でも無意識に再現(再演)します。

AIはあなたの感情に巻き込まれませんし、あなたを怒らせることもありません。それは安全ですが、「他者が存在しない閉じた世界」です。一方、対面のセラピーでは、セラピストという「思い通りにならない他者」との生きた関係性の中で、自分がどのように他者と関わり、傷つき、あるいは守ろうとしているのかがリアルに浮かび上がってきます。

「共に立ち止まる」時間が、こころを強くする

当相談室で行っている精神分析的精神療法では、対面でのセラピーを大切にしています。AIのようにすぐに答えが出たり問題が解決することはありません。すぐに結論を出さず、「なぜそう感じるのか」をじっくりとセラピストともに探索していくプロセスを通じて、狭まっていたこころのキャパシティは少しずつ広がっていきます。曖昧な状態に耐える力が育つと、現実の人間関係で想定外のことが起きても、簡単にはつぶれないしなやかなこころが作られていくのです。

AIは、日常のちょっとした問題の整理や、客観的な視点を得るための「壁打ち」として非常に有効です。AIに話してスッキリするなら、それは素晴らしいことですので、ぜひ上手に活用してください。

しかし、もしあなたが「いつも同じ人間関係のパターンで悩んでいる」「自分の根本的な生きづらさと向き合いたい」と感じているなら、一度生身の人間と関わる対面でのセラピーに足を運んでみてください。 当相談室ではAIでは解決できない「こころの問題」について、ともに考えていくお手伝いをしています。ご興味のある方はぜひ一度お問い合わせください。

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